な か よ く

 

名古屋で瞑想・気功・ヨガの教室を開いてから、
私はよく「どうしてこういう仕事を始めたのですか」と聞かれます。
しかし、その都度私は何と答えたら良いのだろうと考えてきました。
過去を振り返ると、きっかけとなる出来事は一つに絞れません。
すべての出来事がそのような流れになっていたような気もするからです。

だから私はそう質問されたときには、「心から幸せと言える人生を送りたいという気持ちに、正直に生きたら、この仕事を選んでいた」と答えるようになりました。

そんなある日、昔の写真を整理していたら、一枚の写真を見つけました。
それは私が小学一年の時に壁に書いた、おそらく最初で最後の落書きを、十八歳の頃の私が撮った写真です。

小学六年まで、私は東京の築地で暮らしていました。それから目黒に移り、中学三年の時に三重県に引っ越しました。
そしてちょうど十八歳の頃に、東京の大学を目指していた私は、志望校の下見のために上京しました。
その下見のついでに、私は自分が小学時代を過ごした場所が、今はどうなっているだろうかと懐かしく思い、昔住んでいた所を訪ねたのです。

大人にとっては何でもない場所も、子供にとっては秘密の隠れ家になります。
当時の私たちにとっては、ある小さな倉庫が秘密の遊び場でした。
私は昔の記憶を辿りながらその倉庫を見つけ出しました。
当時の記憶に比べて、実際はだいぶ小さな倉庫で、今は自転車置き場になっていました。

そして、ドアを開けて中に入ると、当時の記憶が次々と甦ってきます。
中を見渡しているとまもなく、奥の壁に書いてあった落書きが、私の目に飛び込んできました。間違いなく当時、私が書いた落書きです。

なかよく。

まだひらがながちゃんと書けなかった私は、「く」を「>」と間違えて書きました。
間違いを友達に指摘されて上から×で訂正して、改めて太字で「なかよく」と正しく書き直したのです。
その間違えて書いた「>」まで、全部消えずに残っていました。
私は思わず小学一年の時に書いた、自分の落書きを写真に撮りました。

それから十五年ほどが過ぎた頃、そんな写真のことなどすっかり忘れていた私が、昔の写真を整理していた時に、この「なかよく」を発見したのです。

私はこの写真を見た時、
「ああ、そうかあ・・・」と深く感慨に耽りました。
私が何のために今の仕事を始めたのか、
その答えを見つけた思いがしたからです。
 
「みんな仲良くしようよ」。
そのことを伝えたくて、今の教室を始めたのだなと気づいたのです。

この落書きはまるで小学一年の自分が、三十年後の三十半ばを過ぎた自分のために、書き残してくれたメッセージのように感じられました。

なかよく。

愛とか調和とか幸せとかいう大層な言葉も、突きつめれば私が子供の頃に感じた思いを伝えたかっただけのことです。
そしてそれが私が教室を開き、マガジンやHP、講演や講座に、
無意識に込めていたメッセージだったのです。

宮本 辰彦